隣の部屋と格差社会。
「分かった。」
そう静かに言った佐渡さんは、まっすぐに私の目を見る。
なんだかそんな佐渡さんの目を見るのが辛くて、手に持っていた缶ビールを開けてしまった。
ーープシュッ。
夏の夜に似合う、気持ちのいい音がした。
「お嬢様もビール飲むのか。」
そう、からかうように言う佐渡さんは、きちんと今まで通りを守ってくれようとしている。
なんだかそれが申し訳ないような気もしてきてますますいたたまれない。
「ええ、割とイケる口なんですよ?私。」
なんて、飲んだことないけど。
笑顔、引きつってないかな。ちゃんと、笑えてるかな。
再び煙草を吸い始めた佐渡さんの横顔を眺める。