隣の部屋と格差社会。
私と佐渡さんはお隣さんで、マンションのバルコニーにはエアコンの換気扇が辛うじて仕切り変わりになってはいるものの、仕切り板はない。
触れようと思えば、簡単に触れられる距離。
それなのに。
なぜ、伸ばしても伸ばしてもこの手は届かないんだろう。
「なんで『ごめん』か聞いてもいいですか?」
最後にひとつだけこれだけは聞かせてください。
そう思い聞いてみると、佐渡さんは静かな、けれど芯の通った声できちんと答えてくれた。
「俺には、守っていきたい人が居るから。」
胸が燃えるように熱くなって、火傷したみたいにずきりと痛んだ。
消火しようと慌てて流し込んだビールが、喉を冷やしていく。
2度目のビールはやっぱり苦かった。
すごく、すごく苦かった。