隣の部屋と格差社会。
「ごめんなさい。こんなプライベートな質問して。違ったり、嫌だったら否定していいから。」
「いえ、そんなことは…。あ、あの佐渡さんの隣に住んでるのは本当です。」
そう言うと、お母さんはいきなりきらきらとした目になる。
「恵美から聞いてびっくりしちゃって。」
「そうですよね、知り合いのマンションの隣人が娘さんの保育園の先生だったらびっくりしますよね。」
私もすごくびっくりした。あの部屋から恵美ちゃんが出てきたこと。
「ううん、そうじゃなくてね。まあ、それもあるんだけど。」
静かに首を振り、アイスコーヒーをストローで一口含んだ恵美ちゃんのお母さんは真っ直ぐに私を見つめ話を続ける。
「竜一君から聞いてたの。マンションのお隣さんのこと。」
「え?私の、ことを?」
佐渡さんが、私の話を恵美ちゃんのお母さんに?
一体どんなことだろう。
不安と期待で前のめりになりそうな身体に力を入れ、ぐっと耐え続きを待つ。