隣の部屋と格差社会。
「どういうことですか?」
殺した、なんて物騒な言葉に付いていけない。
どうして、そんな話になるの…?
ごちゃごちゃしていて整理がつかない頭の中は、新たな情報を欲している。
焦る気持ちで美奈子さんの言葉を待っていると、美奈子さんはテーブルに目を伏せたまま切り出した。
「少し昔の話をするわね。」
日曜日の昼下がり。
若い女の人がたくさんのカフェは騒がしいはずなのに、私たち2人の席だけはしんとしている。
「もともと、私と竜一君は高校が同じだったんだけど、接点もなくて一度も話したことなかったの。
でも、たまたま同じ大学の学部に進学してから、誰も知り合いのいない大学で妙な仲間意識が芽生えちゃって。それで、仲良くなったのよ。」
氷が半分以上溶けて、色素の薄くなったアイスコーヒーをからからとマドラーで混ぜる美奈子さんの表情は先ほどまでと違って穏やかだ。