隣の部屋と格差社会。
「恵吾は。あ、旦那、恵吾っていうんだけど、恵吾も同じ学部で、出会ったのは2年生のとき。
3人ともゼミが一緒になって、恵吾と竜一君はすぐに仲良くなった。2人とも車好きで、話があったのね。
私は話に全然ついていけなくて、よく拗ねてたな。」
遠い目をして語る美奈子さんに、私も想像してみる。
佐渡さんの大学時代。
私の知っている佐渡さんは、ばりっとスーツを着こなし区役所で働く社会人。
学生の佐渡さんは、どういう人だったのかな。
たくさんの弟や妹のためにアルバイトを掛け持ちしてそうだな。
なんて、勝手な想像をしながら美奈子さんの話に耳を傾ける。
「3年生の夏、ゼミの合宿の夜に竜一君が大学の準ミスだったゼミの先輩に告白されてるのをたまたま見ちゃって。
ショックでその場で立ち竦んでた私を連れ出して、一晩中慰めてくれたのがきっかけで恵吾と付き合い始めたの。」
それって…。
「実は私、竜一君のことが好きだったんだ。」
少し顔を赤らめて懐かしいそうに、今は違うよ?と頭をふる美奈子さんの言葉は、根拠はないけど本当だと思った。