隣の部屋と格差社会。



「陽が落ちるのが早くなったな。」

「そうですね。もう、秋ですもんね。」


初秋の爽やかな風を感じながら、なんとなく二人で公園をゆっくりと歩く。


勝手に告白しといて『忘れてください』『今まで通りでいて下さい』なんて、これまた勝手な私のお願いを誠実に守ってくれる佐渡さんのおかげで、二人の間には穏やかな空気が流れる。


「今保育園は運動会の準備でおおいそがしですよ。」

「へえ、運動会か。」

「毎年作る万国旗なんですけど、今年はオリンピックイヤーだったことに因んで
各組ごとに国を決めることになったんです。」

「国?」

「えぇ。我がゆり組さんはアメリカで、星条旗なんですけど、星の部分を園児に指で塗らせたりしたんですよ。」

「へえ、面白いな。」


目の前の佐渡さんからは、興味深そうな声が聞こえるけどその表情は見えない。


佐渡さんの隣ではなく後ろをついて行く私の図は、まるで私たちの関係そのもののよう。


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