隣の部屋と格差社会。
居た。
ベランダに行くと、佐渡さんはまだ煙草を吸っていた。
「あの、」
「なんだ?」
「ヤスリとか持ってます?」
「いや、持ってないな。何に使うんだ?」
不審そうな顔をする佐渡さん。あれ、なんだかまたトンチンカンなことを言ってたりして。
「お米を炊きたくて…。」
「米?」
「お米って、研ぐっていうじゃないですか。だから、こうヤスリ的なもので、」
「斬新だな。」
言い終える前に突っ込まれた。ああ、やっぱりまた常識知らずなこと言ったんだ。
「米を研ぐとは、洗うってことなんだ。やり方わかるか?いや、分からないか。」
煙草の火を消した佐渡さんの眉間にはしっかりと皺ができている。
うわあ、絶対呆れてる。
もう、いいや。ここまできたら存分に恥をかこう。
「やり方教えてもらってもいいですか?」
ダメ元で言ってみる。