隣の部屋と格差社会。



「ごめん、遅くなって!」

「いや。それより、恵美は?」


息を切らして入ってきた美奈子は一人で、恵美の姿は見当たらなかった。

てっきりいつも通り二人で来ると思ってたので、正直拍子抜けだ。


「今日はピアノ教室。だから呼び出しといて悪いけど、30分後にはお迎えに行くね。」

「ああ、それはいいけど。」


二人きりで会うのは久しぶりだ。何年ぶりだろうか。


「相変わらず色々通わせてるな。」

「恵吾が言ってたからね。習い事たくさんさせたいって。」

「そういや言ってたな。自分は子供の頃通いたかったのに通わせてもらえなかったからって。」


まだ恵美が美奈子の腹の中に居ると分かる前から、やりたいって言ったら何でもやらせてやるんだ、て意気込んでいた気がする。


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