隣の部屋と格差社会。


まずい、そんなつもりはなかったが人の家の教育方針に口出した形になったかもしれない。


余計なことを言ったと謝ろうとしたとき、顔を上げ真っ直ぐな目をして、美奈子は静かに言った。



「竜一君も、やりたいことやっていいんだよ?」



美奈子の表情は、やっぱり困っているように眉を下げている。


どういうことだ、そう言おうとして止めた。


誤魔化すのはもう辞めよう。


「竜一君は恵吾が死んでから、自分から幸せを遠ざけてるよね。幸せになったらいけないと思ってる。」


その通りだった。

恵吾から、美奈子から、恵美から。
幸せを奪った自分に幸せになる権利なんてないと思っていた。



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