隣の部屋と格差社会。



「私、中学一年のとき、部活の中体連前に部員全員にお守り作ったことがあって。それから裁縫好きになったんですよね。」

「お守り?」

「フェルトで作ったやつなんですけどね。」


あぁ、駅の改札とかでよく見かけるあれか。

学生バックの取っ手に付けてある、バスケットボールやキャラクターなどを模ったものに『絶対優勝』とか熱い言葉が刺繍されているあれ。

おお、なんだか青春を感じるな。


そう羨ましく感じていると、


「で、ため息の原因はこの壁の向こうですか?」


佐渡さんの部屋がある方の壁を指差しな突然晴日先生に聞かれてしまった。


「え?」

「え?じゃないですよ。最近様子おかしいですよ。」


うう、私という人間はどれだけ感情をコントロールできないんだ。


「で?どうなってるんですか?進展はありました?」

「それが…。」


言っていいかな、そう一瞬迷ったけど。


もう自分でも抱えきれなくなってしまっているこの悩みを吐き出したくて、恵美ちゃんの名は伏せて全て話してしまった。


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