隣の部屋と格差社会。
「その菖蒲先生の真っ直ぐな気持ちが、その人の閉ざされた心をこじ開けることが出来るかもしれませんよ。」
解きかけていた糸から目を離し、晴日先生を見ると優しい笑顔でそう言ってくれていた。
「晴日先生…。」
真っ直ぐな気持ち、か。
重たいかもしれない。
そう思っていた気持ちを、そういう風に言ってもらえて嬉しくなってしまい、いつの間にか手元の赤い不織布を握り締めていた。
いけない、シワになってしまう。
それから元気が湧き出してきた私は、黙々と作業に没頭した。
そのおかげで、なんと作業ペースが2倍に。まあ、糸の絡まりも2倍になったんだけども。
ようやく作業にひと段落つき、晴日先生が帰る支度を始めた頃にはもう、外が暗くなり始めていた。