隣の部屋と格差社会。



「じゃあ、また保育園で。」


そう言って晴日先生を見送ろうとしていたとき。


私たちの横を、軽く会釈しながら通り過ぎた人影が目の端に映った。


佐渡さん、だった。



「もしかしてあの人がお隣さんですか?」

「う、うん。」


少し目が合った気がして、一気に心拍数を上げた私のことを見破ったらしい。

晴日先生、本当にするどいな。


「へえ!格好いいじゃないですか。」


エレベーターホールへと向かう佐渡さんの背中を見つめながら、晴日先生はひそひそ声でそう言った。


グレーのパーカーにGパンという休日仕様の格好に、左手には買い物袋。


その買い物袋にはネギが突き刺さっている。今日はもしかして、一人お鍋でもするのかな。


そんなくだらないことを考えていると、


「ちょっと想像と違ってました。」

「え?」


突然晴日先生がそんなことを言い出した。


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