隣の部屋と格差社会。
お嬢様、翻弄される。
なんでまだこんな所に居るの?
マンションの前で佐渡さんが通り過ぎて行ったのは数分前。
もうとっくに部屋に入ってるものだと思ってた。
なぜか佐渡さんは、微動だにせずじっと私を見据えている。
なに、どうしたの?
どうしよう、すっごく見られてる気がする。
怖くてなかなか佐渡さんのほうを見られないけど、視線は痛いほど感じる。
口を開く気配のない佐渡さんに、どうしたらいいのかわからない。
よし、決めた。
逃げよう。
さっきの佐渡さんみたいな軽い会釈だけをして、素早く鍵をまわして扉を開ける。
玄関に一歩足を踏み入れたとき、
ーーーーがしっ。
急に左腕が何かに捕まって、動きが止められてしまった。