隣の部屋と格差社会。

なにが起こったのか分からなくて、一瞬金縛りかと思った。

でも、違う。


動けなくなったのは、左腕が佐渡さんに掴まれたから。

玄関に踏み入れたはずの片足が戻され、目の前でせっかく開けたはずの扉がしまる。


佐渡さんのごつごつと骨張った手が私の左腕を強い力で掴んでいて離さない。

手の甲に浮き出た血管に男らしさを感じて、ただでさえ騒がしい心臓がまた速度を上げ始めた。


恐る恐る佐渡さんを振り返る。


やっとのことで確認できたその表情は、無表情に近くて何を考えているか分からない。


どうにかこの状況を切り抜けないと。そう思うのに身体が動かない。


真っ白な頭を頑張って回転させようとしていると、相変わらずの読めない表情のまま佐渡さんが口を開いた。