隣の部屋と格差社会。
お嬢様、囚われる。
「菖蒲は神前式がいいわよね。お母さんたちもね、神前式だったの。
ああでも、ウェディングドレス姿も見たいわ〜。」
取り寄せさせたという山ほどある式場のパンフレットを楽しそうに眺めるのは倒れたはずの母。
その姿は、『病気』だとか『体調不良』だとかいう言葉には程遠い。
母が倒れたと聞き、慌てて家に帰って来てからもう5日が経った。
武田さんからの電話に出たとき、心臓が止まるかと思ったのに。
震える手でスマホを拾い上げるとき脳裏をよぎったのは、家を出た日に見た悲しそうな、今にも泣きそうな顔。
とにかく行かなくちゃ。
そう思って慌ててタクシーを呼び、実家の住所を告げた。
母はもともと精神的に強い人じゃない。
私のせいだ。私が勝手なことをしたからお母さんに余計な心配をさせた。
こんなことになったのは私のせい。
そう思うと涙が止まらなくて、嗚咽を抑えるのが精一杯だった私は、赤くなるのを覚悟で涙を乱暴に拭い約半年ぶりとなる実家へと足を踏み入れた。
そしたら、これだ。