隣の部屋と格差社会。
ーーーーピンポーン。
「どうした?」
扉をゆっくりと開けた佐渡さんは、怪訝な表情だ。
「すいません、一人暮らしだと大体どのくらい炊いたら丁度いいですか?」
ああ、ごめんなさい。あんな良い動画まで見せて貰ったのに。
ネットも一応開いたんです。
でも、どう調べたらいいか分からなかったんです。
「まあ、2合くらいかな。」
そんな私の心の中での謝罪が聞こえるはずもないのに、きちんと答えてくれる佐渡さん。
「2合?」
それでも、常識知らずの私には通じなかった。
「米をはかるカップは持っているか?」
「いえ…。」
「じゃあ、貸してやるから待ってろ。」
そう言うと、部屋の中へと入っていった佐渡さんは、緑色のプラスチックの小さなコップのようなものを持ってきた。
「このカップ並々に注いで2杯分だ。」
ほう、これでお米をはかるのか。
「ありがとうございます!」
私の勢いのいいお礼を聞くと、頑張れよと言い残し部屋の中へ入っていく。
そんな佐渡さんの背中を見ながら、これ以上迷惑をかけないと強く誓った。
だから、頑張ってお米をたかなくちゃ。
そう、思ったはずなのに。