隣の部屋と格差社会。
「なんで、なんでこんなところに佐渡さんが居るんですか。」
思わず入り口に立つ佐渡さんへと駆け寄ってそう聞いた。
佐渡さんは、何も言わずにいつもと変わらない、いやいつもの何倍か柔らかい表情で私を見下ろす。
冷え切っていた体温が一気に上昇してくるのが分かった。
ふわふわする。また、夢の世界に戻ったみたいだ。
そんな入り口で見つめ合う私たちに、ようやく父が口を開いた。
「菖蒲、お前付き合ってるやつが居たのか。」
突然の質問に驚きすぎて、目を見開いて否定した、のに。
「え、ちがっ」
「はい。」
「え?!」
佐渡さんは、私の否定を遮ってはっきりとそう言った。