隣の部屋と格差社会。
「君、菖蒲のために今の職場を辞める覚悟はあるのか?」
「はい。」
「え?ちょっと、待って」
辞める…。佐渡さんが、区役所を私のために辞める?
どうしてそんなに話が飛ぶの。
どうして佐渡さんはそんなとんでもない嘘をつくの…?
あまりにも話が突飛過ぎる。
訳がわからなくて、呆然と佐渡さんを見上げることしかできない。
しばらく沈黙が続き、空気が張り詰めてきたとき、父の愉快そうな笑い声で空気が一気に緩んだ。
「気に入った。私の下で働いてみろ。」
「え?!」
冗談みたいなことを父は、至極真剣に言う。
驚いて声をあげたのは、私たちの斜め後ろに居る長門さんだった。
「ありがとうございます。 」
頭を深く下げ、嬉しさを含んだ声でお礼を言う佐渡さん。
なんで佐渡さんがお父さんにお礼を言うの?
私だけがこの状況についていけてない。