隣の部屋と格差社会。
お嬢様、幸せに。




「ねえ、佐渡さん…。」


もう何度呼び掛けたか分からない。

佐渡さんの声が聞きたい。


だけど、佐渡さんからは返事が返って来ない。


その代わりに、ぎゅっとしっかり握られたままの手は佐渡さんの熱を伝えてくる。


熱い。


佐渡さんの、私よりもひと回りは大きい男らしい手は燃えるように熱かった。


引っ張られるままにたどり着いたのは、会社近くの立体駐車場。


コンクリートの柱に囲まれたそこは、少し薄暗い。


やっと足を止めたのは、佐渡さんの車の前だった。


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