隣の部屋と格差社会。
お嬢様、初めての満員電車。
日焼け止めは念入りに。
下地やファンデーションを塗った肌にパウダーを軽くはたき、眉毛を整え、口紅を。
お祖母様から成人のお祝いに貰った、お気に入りの真紅の口紅はちょっとお休みだ。
代わりに、春らしいほんのりピンクのリップを塗って完成。
まあ、お化粧なんてすぐに剥がれ落ちることにはなるかもしれないけど。
髪の毛は気合いの編み込みを。
黒のジーパンに、アイボリーのブラウスを着ると仕事用のトートバッグを肩にかけた。
あれもいるかな、これもいるかな、と悩んだ挙句パンパンになったバッグからは、着替えのポロシャツ、それと新調したエプロンがちらりと覗いている。
絵本の『大きなかぶ』がモチーフとなっているこのエプロンは本当に可愛らしい。
けれど、そんな可愛らしいエプロンも今日の私にとっては戦闘服だ。
4月1日。天気は晴れ。
春の陽気が清々しいこの日、私の新たな人生が始まる。
憧れていた、お仕事初日だ。