隣の部屋と格差社会。
でも夢は夢であり、どんなに望んだって手に入れられやしない。
そう自分に言い聞かせ、諦めていた私に転機が訪れたのは大学4年生のとき。
父に言われ、院へ進むことが決まっていた私は当然就職活動もなく少し暇な時間を過ごしていた。
そんなとき、学生相談室の入り口の近くにあったパンフレットがふと目に付いた。
それは、通信教育講座のパンフレットだった。
いろいろな種類の資格が載っていたそれには、保育士資格も載っていて。
そんな方法もあるんだと思った。これなら、私にも出来ると思った。
大学院に入ってから始めた保育士資格取得のための秘密のお勉強はただただ楽しかった。
諸々の手続きは、お父さんの秘書である武田さんにやってもらっていたから父には筒抜けだったかもしれない。
今となっては、そう思う。
ただ、その頃の私はやりたいことをやれているという充実感で一杯でそんなことは何一つ考えもしなかった。