隣の部屋と格差社会。
近い、暑い、痛い。
人口密度が高すぎる。満員電車ってこんなに大変なの?
どうしよう、後ろのおじさんとの距離は0センチ。おじさんの大きなお腹が私の背中に密着している。
どうしよう、気持ち悪い。
きっと、おじさんだって仕方ない状態なんだ。それでも、やっぱり気持ち悪い。
息が、できない。もはや酸欠状態になってきた。
苦しい。
ガラス窓に顔を貼り付けたまま、身を捩っていると、ふいに背中の生暖かい感触が消えた。
ーーードン。
と、小さな音を立てたのは、男の人の腕。
ちらりと音がした方を見ると、私の頭の右上に置かれた腕は、背中に空間を作ってくれている。
その空間の中で守られているみたいだ。
何事かと、もう一度今度は大きく振り返り、その腕の持ち主を確認する。
私を守ってくれている存在。それは。
佐渡さん、だ。