隣の部屋と格差社会。
「大丈夫か?」
「は、はい。」
答えながら身体を反転させると、目の前には佐渡さんの胸板。
見上げると、佐渡さんの心配そうな顔。
近い近い近い。その距離20センチほどだ。
電車の中が熱いからなのか。
それとも、佐渡さんとのこの距離感のせいなのか。顔が熱い。
かつてない男の人との距離感にどぎまぎしながら、電車に揺られていると、
「おい、ここだぞ。」
と、目の前の佐渡さんに声をかけられた。
あれ、もう着いたんだ。なんだか長かったような、短かったような。
ぼけっとしていると、佐渡さんは私の背中を押して出口へと誘う。
でも。
出られない。どうしよう。
多分、この先に出口がある。それは分かる。
それでも、人の壁が厚すぎて先に進めない。
『ーーードアが閉まります。』
無情なアナウンスが車内に響く。
まずい。このままだと、電車が出てしまう、そう思ったとき。
ーーーグイッ。
誰かに腕を思いっきり引っ張られた。