隣の部屋と格差社会。
「どうだった、仕事は?」
「なんとか、今日1日やり切ったって感じです。」
「そうか。お疲れさま。」
まっすぐ前を向いたまま労ってくれる佐渡さん。
昨日出会ったばかりなのに、なんだか親戚のお兄さんみたいな感じがして変な気分だ。
「夕食はどうするんだ?」
「あ!そうですよね…。自分で用意しないとごはん食べられないんですよね。」
「そりゃ、一人暮らしだからな。」
そうだよね。一人暮らしってそんなものだ。前みたいに、この家にはお手伝いさんなんか居ないんだから。
今から一人ぼっちの部屋に戻って食事をするのか。寂しいな。
「豚丼、食べるか? 」
この人は神様か、と思えるほど有難い言葉に驚いて佐渡さんを見ると、作り置きの分があるから心配するなとビールを飲み干した。
なんでだろう。
出会ったばかりのこの人と、今から一緒にご飯を食べれるんだと分かっただけで疲れなんて吹っ飛んでしまう感じは。
私は、いつからこんなに食い意地がはるようになってしまったんだろう。
春の夜、佐渡さんにわけてもらった温かい豚丼を自分の部屋で食べながら一生懸命考えたけど、答えは見つからなかった。