隣の部屋と格差社会。
準備しろ、連れてってやるからという有難い言葉に甘え、夏が近づき少し日の長くなった夕方の道を佐渡さんと二人で歩く。
「銭湯っていくらくらいしますか?カード使えます?」
「俺がよく行くところは500円もしない。カードは…。一度も使っている人を見たことないな。」
「まあ、今まで使っていた父名義のカードはもう止められていて使えないんですけどね。」
「そりゃ、家出したんだからな。」
ここを右、と急に曲がった佐渡さんについて行くべく早足になると、バックの中のシャンプーセットがかたかたと鳴った。
「通帳も、正直残高があまりなくて。」
「そりゃ、最初からあれだけのマンションに住めばな。あれは新社会人が住む部屋じゃない。」
あれだけ…ってあのマンション結構グレードが高かったの?
駅まで徒歩15分ていうから、グレードは低めかと思ってた。