隣の部屋と格差社会。
「そうですか。では、保険証はお持ちですか?」
「あ!持ってます、持ってます!」
良かった。保険証なら辛うじて持っていた。
慌ててバッグを漁り、お母さんお気に入りブランドのお財布を見つけ出す。
誕生日にお母さんから貰ったものだ。
家を出るときに必死で私を止めていた母の姿を思い出す。
あぁ、こんなところでプチホームシックを起こすなんて。
父に啖呵を切ったのがつい先日だっていうのに。
しっかりしろ、菖蒲。
「保険証の場合、顔写真が載っていませんので、いくつか質問させていただきます。」
「はい。」
「世帯主のお名前をお願いします。」
「世帯主…?」
「世帯を代表されている方ですね。」
分からない言葉がいっぱいだ。