隣の部屋と格差社会。
「どうして区役所の職員さんになろうと思ったんですか?」
本当に思いついたことをそのまま聞いた私の突飛な質問に、急だな、と困った顔をした佐渡さんは少し間を置いてから話し出した。
「公務員は安泰だからな。まあ、家族を養うためにも一番いいと思ったんだ。まだ下は小学生だしな。今からまだまだ金がかかる。」
「確かに…。」
「夢のない職選びだろ。」
自虐気味にそう言う佐渡さんは、少し歩みを緩めた。
「でも私、『公務員』って佐渡さんにとって、天職だと思います。」
「そうか?」
「はい!人に奉仕するお仕事、面倒見のいい佐渡さんにはぴったりです!」
実際、佐渡さんの区役所での対応はとても丁寧で助かった。まあ、勘違いしていた部分もあったが。
「仕事好きだよ。」
ぼそっとそう言った佐渡さんの声色は少し堅い。
照れてるのかな。珍しいな。そう思ったとき、
「でも、」