隣の部屋と格差社会。
…でも?
何かを否定するような言い方に、首を捻り次の言葉を待ったけど答えは帰って来なかった。
「いや、なんでもない。」
どうしたんだろう、佐渡さん。仕事で何かあったのかな。
小さな声でそう言った佐渡さんは、半歩先を進んでいて表情までは見えない。
結局、佐渡さんの深くに踏み入ることはできなかった。
それからは、佐渡さん家の大家族ならではな楽しい苦労話を聞きながら帰った。
銭湯効果なのか、なんだか身体も心もポカポカだ。
小さい頃から弟さんや妹さんの面倒を見て、両親を支えて。
家を出た今でも、一生懸命働いて家族を支えてる。
素直に格好いいと思った。
自分の足で立って、自分の力で歩いている佐渡さんのことを。
家族を愛し、愛されて。
親の言う通り生きてきた私とは全然違う。
別世界の人だな、と思った。