隣の部屋と格差社会。
「根性あるな、お嬢様。」
ふいに佐渡さんはそう言って、ふっと笑った。
なんだかそれが心底嬉しくて、顔に熱が集まっていくのを感じる。
きっと、今私の顔は真っ赤だ。
でも、そんな顔を見せたくなくて、佐渡さんから顔を背け、外に広がる景色を見つめた。
25年間過ごしてきた自分の部屋からは、家の敷地しか見えなかった。
でも、今は違う。
自分のお金で借りたこのマンションは、自分で稼いで家賃を払っているこのマンションのバルコニーからは色々な光が見える。
狭い世界じゃない。広い、広いこの世界で私は生きている。そして、これからも生きて行くんだ。
あんなに落ち込んでいたのに、佐渡さんに聞いてもらえるだけですっ飛ぶなんて。不思議だ。
がんばろう、明日からも。
そう思えた、6月の少し蒸し暑い夜だった。