隣の部屋と格差社会。
「こちらの住所でお間違いありませんか?」
「はい、違います。」
「そうですか。…はっ?」
発行した住民票の確認をしていた佐渡さんは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まった。
「今日、引っ越したんです。」
住民票に印字された住所は、実家のものだ。
昨日入居したばかりとはいえ、今は一人暮らし用のマンションに住んでいる。
「そうだったんですか。では、住所の変更手続きはまだお済みでないということですね?」
「え?引っ越したら自動的に登録されるものなんじゃないんですか?」
「そんな便利なシステムは今の所ありませんね。」
そうなの?!
自分で手続きしなきゃいけないものだったなんて…。
驚愕の事実にしばらくフリーズしていると、目の前に居る佐渡さんがふっと、鼻で笑った。
え?とまた驚いて瞬きをしている間に、お仕事仕様の真面目な顔に戻ったけど。