隣の部屋と格差社会。
「恵美ちゃんのお母さん来ましたー!」
静かだった教室に、元気な声が響いた。
同じ遅番だった晴日先生の声だ。
「すみません、遅くなりました!」
晴日先生の後ろから息を切らせてやって来たのは、
「お母さん!」
恵美ちゃんのお母さんだ。
初めて恵美ちゃんのお母さんに会ったけど、驚いた。すごく美人だ。女優さんみたい。
吸い込まれそうな大きな目は、綺麗にアイメイクが施され、真っ赤なルージュののった魅惑的な唇は、とても6歳の娘がいるとは思えない。
でも、
「みてみて!菖蒲先生がやってくれたんだよ。」
「わあ、すごい。恵美、プリンセスみたいだよ。」
恵美ちゃんにそっくりだ。いや、恵美ちゃんがお母さんに似てるのか。
素敵なお母さんだな。
自分の力で恵美ちゃんを立派に育ててる。
そんな微笑ましい親子を見送ると、ようやく今日の仕事が終わった。