隣の部屋と格差社会。
「休みか。どこか行くのか?」
「あ、はい!電気屋さんに行こうかなって。」
「電気屋?」
「はい、アイロンを買いに。」
「ああ、あの電気屋がたくさんある通りに行くのか?」
「そうです、そこです!」
そう言うと、佐渡さんは少し怪訝そうな顔をした。
「結構駅から離れてるけど、大丈夫か?」
「え?駅から徒歩10分って書いてありましたよ。」
徒歩10分。それは、一人暮らし当初こそ長い道のりだったが今では、なんてことない距離だ。
心配されるような距離じゃないのに。
そう思って、電気屋への行き方を示したままのスマホを見せる。
「あ、車で10分だ…。」
佐渡さんに差し出した瞬間に気付いてしまった。
「歩くと、まあまああるぞ。しかも、あそこバスのいいのがないんだよな。」
なんと…。どうしよう。
アイロンが一体どのくらいの重さか想像つかないけど、車で10分の道のりを歩き切る自信はない。
「俺の買い物に付き合ってくれたら、車出すけど。」
「え、買い物…?」
「ああ、ちょっと付き合って欲しい店があるんだ。」