おきざりにした初恋の話

「別れよう」

「今までありがとう」

そう言った黒田くんは、笑っていた。
何かを吹っ切ったような顔をした彼は、「俺も慣れない街で頑張るからお前も頑張れ」と言ってきた。

何を頑張るというのか。
彼がいなくなるこの街で、私は何を頑張れるだろうか。
唇を噛んだ。

だけど1番言いたい、「行かないで」という言葉は言えなかった。
だって意味がないから。
行かないでと言えば、彼は行かないでくれる?そんなことはありえない。
そのことをよく知っていた。何故なら、彼のそんなところも大好きだったから。

そして私の記憶が正しければ、彼はこう言った。
10年後のこの日、お互いに相手がいなければ、この場所で再開しよう、と。

約束をした。
もしも本当にその時が来たら、これはもう運命だから、結婚しよう、と。

そんな約束、どうせ叶わないと思った。
だって10年も経ってしまったら、きっと私は誰かと既に結婚して子供がいて、あなたのことなんて綺麗サッパリ忘れていると思うから。
そしてそれは、仕方がないことだと思うから。

だけど現実はどうだ。

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