おきざりにした初恋の話
———俺、離れた大学に行くんだ。
そう言われたのは、あろう事かその大学に受かった後だった。
高校3年生の秋のことだ。
大学に進学することは知っていた。
必死に受験勉強をしてることもわかっていた。地元の大学の過去問を解いていたから、てっきりそこを目指しているんだと思い込んでいた。
本当は何も知らされていなかった。
高校を卒業しても一緒にいられると思っていたのは私だけで、黒田くんは私に内緒で着々と離れる準備を進めていたのだ。
どうして教えてくれなかったんだと問い詰めると、教えたら泣かれるから言えなかったんだと彼は言った。
そんな優しさならいらないと私は言い返した。
遠距離恋愛、というものが出来る自信は無かった。
地上での距離がそのまま、心の距離になると思っていたのだ。
世の中には日本とヨーロッパで恋愛している人だっているというのに、その時の私はとても視野が狭かった。
1度ずれた歯車は、自然に元には戻らない。放っておくとそのずれが広がって、いずれ噛み合わなくなるだけだ。