岡崎くんの恋愛塾
「⋯⋯行ったか」
小さく呟くと長い息を吐いて、やっと私の口元から手を離した。
そのまま崩れるように私が座っていた椅子にドカリと腰掛けた。
手が離れた瞬間、私は止めていた呼吸を再開。
思わず「はぁっ」と音を立て息を吐いてしまう。
く、苦しかった⋯
胸に手を当て目を開けると、再びバチリと目が岡崎泰正と合う。
ソイツはじっと私を見ていて、思わず私まで腰が崩れそうになった。
耐性がない私はただビビリ、反射的にその場から逃げようとする。
リュックサックを勢いよく持ち上げ走ろうとすると、
「おい」
ガシッと腕を掴まれた。
ブルルッと体が震え、むず痒くなる。
恐る恐る後ろを振り返ると、すぐ近くに恐怖の対象が座っていた。
今まで頑張って男子に近付かないようにしてたのに⋯⋯。
しかもコイツよりによって岡崎泰正かよ⋯⋯。
心の中で頭を抱えながら、私は小さな声で「なんでここにいるんですか」と呟いた。