岡崎くんの恋愛塾
二人が揃うことはなかなかない。
それで今目の前にいるのなら、今のうちに近付いちゃおう。⋯⋯なんて考えた生徒が多いのかな、と思う。
この学校のアイドルのように大人気な彼らの追っかけのせいで、昇降口に辿り着くのも一苦労。
校舎に取り付けられた時計を見上げると、すでに時刻は八時半を過ぎていた。
だからこの時間は嫌なのに⋯。
はぁ、と誰にも聞こえない小さなため息を零す。
「佳奈、行こっか」
ずっと耳を塞ぐ佳奈の肩を叩いて私は言った。
避けながら前に進み、押された衝撃で視界に彼らの姿が写った。
すぐに目の前に人が来て見えなくなるが、表情は明らかに苦笑いだった。
どこか「分かれよ」とでも言っているかのような、そんな顔。
⋯⋯私には関係ないけど、
他の男子生徒や女子生徒は、集団に迷惑そうにしながら身を捻らせ昇降口に入ってゆく。
あんな近距離、分からない筈ないのにみんな容赦ない。
彼らを追っていると周りが見えなくなるのだろうか。
っと、そんなこと考えてる暇なかった。
ハッと気を取り戻すと、一番人集りが少ない三年の昇降口から校舎に入る。
外履きを上履きに履き替え、教室がある三階へ向かった。