ミチオ
それから少しして、ミチオに会うことは無かった。


いつものようにまた適当に会えるかと思って二人でよく歩いた散歩道だったり、図書館のいつもはミチオが物色しているであろう棚の辺りを歩いてみたり…


けれどいくら私が二人で会った形跡を辿ってもミチオに会うことは無かった。


そっか。


そうだね。


知っている事と知っているような事を知ってるのは違うね。


私、本当にミチオの事、何も知らない。


こんな時に連絡を取れる電話番号もメアドすらも知らない。


少しはミチオの事を知ったような気がしてたけど、私は何も知らないんだミチオの事。


何も知ってなかった。


違う。


知ろうとしなかったんだ。


いくらでも知れたのに知ろうとしなかった。


知っているような事を知ってただけだ私。


それに、今、突然のように芽生えたこの気持ちにも。


本当は気付いていた。


なのに、


ずっと気付かないふりをしていた。


自分だけなんじゃないかって。


ミチオは私の事なんてなんとも思ってないんじゃないかって。


知るのが怖かった。


だからずっと知ろうとしなかった。


バカだな私って。


ミチオの事、こんなにも好きなんじゃない。


その事に気付いたのは、ミチオに出会って半年以上過ぎた頃だった。



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