ミチオ
「だから、プライベートで撮ってたってさっき、言ったじゃない。もぉ、あなたと話してると調子狂って仕方ないわ。」


呆れたように言いながらもマネージャーさんは私にそのまま話を続けてくれた。


ミチオはその女の子の力強い目に惹かれ、なんてことない会話をしながらも撮っていたってこと。


女の子もミチオに心を許していたこと。


それはミチオにとってもとても有意義な時間だったそうだ。


けれど、写真集の撮影も終わりその地を離れたミチオが再び訪れた時、もう彼女に会えなかったそうだ。


そして、ミチオが知った真実。


女の子は重い病気だったこと。


もう助からない状態だったってこと。


そしてーーー


静かに息を引き取ってしまったこと。


僅か、11年の命だったそうだ。


「彼ね、その子のご両親に会ったのよ。それでその子が書いていた日記を見せて貰ったそうよ。」


毎日が楽しい。


写真のお兄さんに会えるのが楽しい。


撮って貰えるのが恥ずかしいけど嬉しい。


そんな風な事が綴られてたって。


そして最後にもし願いが叶うなら


もし私がちゃんと大人になるまで生きられるなら、


モデルさんになって写真のお兄さんにまた撮ってほしい。


そしてお兄さんにちゃんと伝えたい。


大好きってことと


ありがとうって。


「満ね、自分は何も見ていなかったって。何一つ知らなかったって。知ってるようでいて、何一つ全く、彼女をしらなかったって。それから暫くして姿を消したの。彼の命と同じくらい大切なカメラも全て置いたまま。」









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