ミチオ
今日は少し歩き過ぎちゃった。


足が痛い。


接客業は立ち仕事だから足腰強く思われそうだけど、逆だからね。


みんな足やら腰やらに何かしら抱えてる。


公園のベンチで休むことにした。


平日の公園には若いママさん達と小さな子供しかいない。


私もあそこにいてもいいくらいだ。


そんな年齢だもん。


今年、27になる私は十分適齢期だ。


実際、友達の中にはもうすでにお母さんになってる子もいる。


そう言えばミチオって何歳なのかな。


一見、若そうに見えるけど案外、歳取ってたりして。


童顔ってやつ?


そんな事を考えながら思い切り伸びをする。


「うぅ〜、腰が伸びて気持ちいいわ。」


見上げた先には青い空、白い雲。


ミチオ…


ミチオがくれた沢山のスナップ写真の一枚にあった空の写真。


それは、とてもじゃないけどプロの写真家が撮ったものとは思えないものだった。


斜めになっててどこが上なのか下なのかもよく分からないし、揺れてブレててハッキリしないし。


だけど、確かにそこには彼が恐らく初めて見た景色があった。


飛行機の窓枠越しに見た景色。


私に聞いた景色じゃなくてミチオが自分の目で見た雲の上の景色が。


高所恐怖症だと言ってたミチオが一体、どんな風にしてこの景色を撮ったのだろう。


想像すると笑えるよね。


少しそのまま目を閉じる。


ついこの前まで蝉の大合唱が聞こえてたけど、今はもう聞こえない。


日差しもほんの少しだけど和らいできた気がする。


目を閉じるだけで色んな音や匂い、頬を掠める僅かな風も敏感に感じとることが出来るんだね。


その時、昼下がりの公園に無機質なシャッター音が響いた。

















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