ミチオ
ミチオはとてもスマートに道案内をしてくれたわ。


あっという間に見覚えのあるカレのアパートに着いた。


ドアの前まで来ると勢いよくバンッて開けようと思ってた。


ドラマとか小説みたいに「その女、誰よっ。」って言ってやろうと思ってた。


でもね、


ドアを開けることも、ヒステリックに叫ぶこともしなかった。


だってね、聞いちゃったから。


声をね。


やだ、違うって。


アレの声じゃないわ。


アレの声だったら寧ろ勢いよくバンッて開けてた。


ヒステリックに叫んで暴れてヒール振り回して…


でもね、止めた。


だってね、


子供の声がしたんだもん。


「パパ」って。


それでね、女の人の声も微かに聞こえきてーーー


楽しそうに笑ってた。


私が一度も聞いたことのないような、幸せでいて楽しそうな笑い声。


だから、もういいやって。


知れたから。


カレが幸せなんだなって知る事が出来たから。


それにね、


結局、私が浮気相手って事じゃん。


その事実が私の手を止めたんだ。


ドアを開けようとしたその手、を。




< 2 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop