ミチオ
悔しい…


絶対に私からは振り向かないって決めてたのに、私の予想を裏切って彼は私の前に回り込んで来た。


まるで通せんぼするみたいに。


そして再び放たれる言葉。


「ねぇ、どこに行きたいの?ニャオちゃんは。」


漸くまともに視線が絡む。


少しの間、会わなかっただけなのに。


もう何年も会わなかったくらい懐かしく感じる。


私の完敗だな。


本当なら意地悪して反対側に歩いて行きたいところだけど…


私の行く先はあいにくそっちじゃないもんね。


一つ軽く深呼吸すると


「どこって…えっと…、そうだ、スタートラインよ。私のスタートライン。」


彼の目を見てあの時のように言ってやったわよ。


堂々とね。


すると、


「じゃあ、ここだね。おいで。」


カメラを手にしたまま両手を広げた。


吸い寄せられるように私は彼の胸に顔を沈めた。













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