あの春、君と出逢ったこと
春
君との出逢い
kou_side
『おっす、煌(コウ)』
いつもと同じ時間。
いつもと同じ通学路で、いつもと同じ奴に声をかけられる。
『……ああ』
『たく、本当愛想ないよな〜。
そんなんだからいつまでたっても彼女が出来ないんだ』
そう言って、声を掛けてきた、カバンを肩にかけている男が笑う。
『……お前は、いつも煩いな』
溜息をつきながら、声の主である佐藤快斗を見てそう言う。
『まぁな! それが俺の個性なんで』
快斗と俺は、世間でいう幼馴染で、よく言う腐れ縁ってやつ。
『あ、そーそー! いい情報入ったんだよな〜』
俺とは違い、フレンドリーな快斗は、友達が多いからか、何かと情報が回ってくるらしい。
……それを、何故か俺に伝えてくる。
いつものように、聞いて欲しそうに俺を見ながらそう言った快斗を無視し、先を歩く。
『ちょちょちょ! 待ってくれよ煌君』
『お前に君付けされると、全身に鳥肌が立つ』
ふざけて俺を君付けで呼んだ快斗を睨みつけながらそう言うと、抗議をしなが快斗が騒ぐ。
……他の人の迷惑だろ。
そう思いながらも、声には出さず、快斗を素通りして歩き進める。
いつもと、同じ日常。
つまらないのは承知している。
何か、違うことが起こらないかと、願っていることも。
『聞けよ、煌‼︎ 今日、俺達のクラスに転校生が来るんだぜ‼︎』
『……あっそ』
快斗の言葉に何となく興味を持ったが、快斗がこれ以上煩くなるのを考えて、興味を押し殺す。
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