あの春、君と出逢ったこと





私の言葉にいち早く反応した快斗君が、我に返ったように、翠の手を掴んで慌てて私達の所に駆け寄ってくる。



『俺、りんご飴食べる』


『……勝手に食べてなさい』



そう言いながらまた喧嘩しそうな2人をなだめて、未だに鋭い視線を向ける女の子達をチラッと横目で見る。



……またあの中を通らなきゃいけないって考えると、どうしても気が重くなるんだよね。



誰にも聞こえないよう、小さくため息をつく。



でも、これ抜け出さなきゃ、花火もいい位置で見れないし。




『遅い』





色々と考えていた間に抜けていったのか、翠と快斗君の姿はなく、煌君が呆れながら私を見下ろしていた。


『ごめんごめん』



そんな煌君に軽く誤った私を見て、煌君が私の手首を掴んだ。



『……え?』






驚きで上がった私の声など無視して、煌君が、少しだけ少なくなった女の子達の人だかりを掻き分けていく。




朝倉双子は、手首を掴むのが好きなの⁉︎


掴まれている手首のせいか、さっきよりもキツイ視線を向けてくる女の子達と、目が合わないように視線を下にする。




『……やっと出た』




煌君のその言葉で、中心から脱出したことを知り、顔をあげる。



『うわぁ……‼︎』




顔をあげると、目の前には、色んな屋台と、浴衣を着ている人たちでいっぱいで。



初めて見た光景に、思わず感嘆の声を上げる。




『……お前、転校してきたから、見たことないのか』



驚く様子もなくそう言った校訓に、少し興奮気味に頷く。



前に住んでたところは、小さい祭りだけだったから。


こんなに盛大な祭りって初めて‼︎









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