あの春、君と出逢ったこと



『やっときた。遅いぞ、煌、栞莉チャン‼︎』




『ごめんごめんっ‼︎

それにしても、凄いねこの祭り‼︎』




少し歩いた所で待っていた翠と快斗君に駆け寄って、私と同じく少し興奮気味の快斗君にそう言う。




『だよなー。

俺、この祭り1番好きなんだよ。
最後の花火も最高だし‼︎』



まるで自分のことのようにドヤ顔でそう言った快斗君に、笑みが零れる。



ドヤ顔と思ったのは私だけではなかったようで、快斗君の隣にいた翠が快斗君と頭を叩いた。





もしかして、これはまた喧嘩するパターンじゃ⁇



そんな私の心配などつゆ知らず。


案の定、言い合いを始めた快斗君と翠を見て溜息をつく。



早く回りたいんだけどなぁ……。



屋台の方に集まり、騒いでいる人たちを見て、快斗君たちに視線を移す。



止めなきゃ回れないよね?



『快斗君、翠。喧嘩しないで回らない?』



未だに激しい口喧嘩を続けている2人に近づき、
そう声をかける。




『先に回ってなさい、栞莉』


『先に回ってろよ、栞莉チャン‼︎』



そんな私の言葉に、同時に振り返った2人が声を合わせて……偶然なの、かな?


取り敢えず、ワザとと思えるほど、ぴったり息のあった台詞を叫んだ。





まぁ、ワザとじゃないのはその後2つ付いた喧嘩で分かったんだけど。



今度も息ぴったりで、真似しないで! って叫んでたし。



……それが原因で、未だに目の前で繰り広げられている喧嘩を止めることは、私には到底出来そうにない。




『どうしよう⁇』



一連の様子を外から傍観していた煌君の元に駆け寄り、2人を指す。




私の言葉に2人に視線を移し、少し考えた素振りを見せた煌君が、なぜか私の手をとる。






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