あの春、君と出逢ったこと



『でも、この前だって』



続けようとした私の言葉を遮るように、煌君が私の頬を横に引っ張る。



『俺が払いたかっただけだ』



煌君に頬を引っ張られながらも、でも。と続けた私を見て、煌君がため息をつく。




『この話は終わり』



その言葉と同時に手を話した煌君が、その手で今度は私の手を掴む。



『煌君⁉︎』


今日、煌君に手を掴まれる率高いよね!?


頭の中でプチパニックを起こしながらも、煌君に声をかける。




『花火。

どうせなら、いいところで見たいだろ?』




私の言葉に振り返った煌君は、そう言って、意地悪な顔ではなく、今までで1番。




綺麗な顔で笑った。





『……うん!』




そんな煌君に笑い返して、考える。



自分の心臓が、激しく音を立てている理由を。





まさか……ね?

でも、ゼロとは言えない。





そんな葛藤が、私の中で続く。



『……間に合ったか』



こう君に引っ張られているうちに、目的地についたらしく、私から手を離した煌君が携帯で時間を確認してそう言った。




『……ここ……すごい』




『俺の特等席』




どこかの高台なのか、下を見ると、祭り会場の屋台の明かりが綺麗に輝いている。



誰もいないのが不思議なくらい綺麗だっだ。



『立ち入り禁止だから、静かだろ』


サラッと、何事もないようにそう言った煌君に目を見開く。



『立ち入り禁止⁉︎』



思わず声が大きくなるのは仕方ない。



今まで、立ち入り禁止の所になんて、来たことなかったのだから当然だと思う。



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