あの春、君と出逢ったこと



『お前は行かないのか? 来年は』



花火を見ながらそう聞いてきた煌君に、思わず息を呑む。


また、来たいけど、ね?



『分かんないなー』



来れるとも、来れないとも言わない。


曖昧な返事をした私に納得しなかったのか、眉間にしわを寄せた煌君を見て笑みを浮かべる。




『どうせ、翠がお前を引っ張るに決まってる』



確かに、翠なら誘ってくれそうだよね。
断っても、無理やり浴衣着せてさ。



お得意の早業で。



『その時には快斗君と翠、くっ付いてるかな?』



『どうだか』



そんな事を話しながら、煌君と2人で笑い合う。



目の前で、花火が勢いよくたくさん上がっていくのを見る。



フィナーレを物語るように打ち上がっていく花火を見ながら、今日の事を思い出す。


顔が、赤くなった理由も。





『栞莉⁇』


花火を見ながら黙り込んだ私を不思議に思ったのか、煌君が私の肩に手を置きながらそう言う。



ほら、やっぱり。



手の置かれた肩も。

名前を呼ばれて反応した顔も。


全部が煌君に反応して、熱くなっていく。


心臓でさえも、音を立てて。




こんなの、ありえない。


信じたくない。




ダメなのに。
それでも、頭の中ではずっと前からどこか理解していた。



『綺麗だったね‼︎ 煌君』



作り笑いで取り繕う。



『……ああ』



そう言って笑った煌君を見て、熱くなっていく顔を感じて、確信する。




私は、煌君が好きだ。






それで、何ができる?






短い中で、何もできずに終わる。



それでも、私は煌君が好きだ。






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