あの春、君と出逢ったこと




診察室に入った途端に、私は自分の状態が良くない事を、目の前の叔父さんから感じ取った。



『……座ってくれ』



だって、ほら。

さっきと口調の強さが違う。
目つきも、違う。


さっきとは違ってどこか、悲しそうな目をしているのが分かる。




『叔父さん。
私、あとどれくらい生きれるの?』



わざと明るくそう言った私に、叔父さんが言いづらそうに口を開く。





『……長くて、半年』





重々しく口を開いた叔父から、そのことを聞いた瞬間、まず初めに思ったこと。


それは、お母さんがこの場にいなくてよかったという事。



もし居たら、きっとショックだっただろうし、それに、心配をかけさせる事になるからね。




『……半年、か。

今まで通り、薬でいいんだよね?』




自分もショックを受けているくせに、それを隠して明るく偽る。


『入院は本当にしないのか?


入院したら、少しは長く生きれるのに!!』




そう言った叔父さんの顔が、写真で見たお父さんの顔と、かぶって見える。



でも入院したら、お母さんに余計にお金を払わせる事になるし、それに、翠たちにも話さなくちゃならない。


そんなの、私が耐えきれない。




『入院はしないかな……私ね、残りの人生、悔いが残らないように、思いっきり生きるつもりだからさ!』




笑顔でそう言った私を見て、叔父さんも笑い返してくれた。



『俺は、お前が仲の生きれるように手助けをするから、お前の好きな様に生きろよ?』




『言われなくても、そうするつもり』




最後に叔父さんに笑いかけて、お礼を口にしてから診察室を出て、いつも通りの場所へ薬をもらいに行った。



薬を受け取って家に帰るときには、空は少し暗くなりかけていて、結構時間が経っていた事を知る。






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