あの春、君と出逢ったこと



『早く出ないと遅刻する……っ‼︎』



この前の快斗君をまた見るなんて、恐ろしくて考えたくもないしね。



『準備するものはー……』



1つ1つ言葉にしながらカバンの中に詰め込んでいく。



準備が終わり、時計を見ると既に7時半を指していて、慌ててお母さん宛のメモを書く。


一応メモ残しとかないと、心配性のお母さんのことだから、警察とか行きかねない。




私がいないことに慌てて、警察に電話をかけるお母さんを想像して、おもわず笑ってしまう。


簡単想像できるから、面白い。



『行ってきまーす!』



病院の時とは違い、明るい声でそう言って鍵持って家をでる。


歩いたら遅刻しそうだし、自転車で行こう。



お気に入りの赤い自転車にまたがって、イヤホンを耳につけて自転車をこぐ。



この学校に来てから、自転車で学校に向かうのは何気に初めてかもしれない。


まぁ、自転車登校禁止の学校だから仕方ないんだけど。




音楽に乗りながら自転車をこいでいると、徒歩40分ほどかかる道よりもあっという間に着いてしまう。





学校に着いたことを確認して、ポケットに入れてあった携帯で時間を確認する。


8時丁度の5分前。



『間に合ってよかった』



そう言いながら自転車を目立たないところに移動させる。


それにしても、夜の学校はなかなか怖い。



でそうじゃない?
……あまり信じてないんだけど。



恐る恐る門越しに中を覗いて、誰もいないことを確認してから門をよじ登る。




『……あ!』





なんとか学校の中に侵入し、周りを見ながら少し先へ進んでいると、既に来ていた快斗君が私に向かって手招きをする。



『快斗君、早かったね!』


『まぁな。
あとは翠と煌か』









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