あの春、君と出逢ったこと
ガッツポーズをしてそういった私に、さらっと快斗君がそういって笑う。
……え?
快斗君、今、なんて言った?
『……実行委員?』
恐る恐る聞いた私に、胸を張って右手で作った拳を胸に当てた快斗君が、ドヤ顔で頷いた。
いつもなら突っ込むはずの快斗君の行動にすら反応できず、フリーズ状態続く。
別に、快斗君が委員会で驚いた訳じゃない。
……まぁ、それが絶対かなんて聞かれたら、頷けないけど。
『じゃあ、本当に肝試しやるの??』
『そ! 俺、もうクジまで作ってるし』
心の底から楽しんでいる笑顔を浮かべまた快斗君に対して、私は苦笑いしか浮かばなかった。
それもそうだよ、だって、本当にお化けとか苦手だから。
それに、快斗君と煌君以外の男子と話したことなんて、ほとんど無い。
記憶がある限り、数えきれるほど。
そのうち半分は先生からの伝言だし、会話ってものには入らない。
でも、快斗君と同じクジ引くなら、翠と変わってあげたい。
……煌君と2人で肝試しなんて、それはそれで大変だとは思うけど。
『お! やっと来たか、2人とも!!』
快斗君のその言葉に、ぐるぐると回っていた思考をバシッと止める。
肝試しのことは、当日決めればいいよね!
『栞莉……遅刻しなかったのね』
感心したような声色でそういった翠を横目で睨む。
『翠達の方が遅かった!』
『遅刻はしてねえよ』
8時ぴったり。と言って煌君が見せた時計を見て、しぶしぶ納得する。
『じゃ、揃ったことだし、行くか!』
警備員にみつからないくらいの小声で言った快斗君に、頷いてみせる。