あの春、君と出逢ったこと




『……快斗、お前が先頭で大丈夫なのかよ?』


1番後ろにいる煌君が、先頭を歩く快斗君にそう言う。


『でもさ、煌。

俺が前じゃなかったら、お前が前になるだけだぜ⁇』



快斗君のその言葉に、煌君が言葉を詰まらせる。



今、私たちは一列に並んで、プールに向かってるんだけど。



何故か、悪いことをしている人たちのように物凄くコソコソと歩いていた。



……あ、悪いことしてるから、コソコソとしてるのか。



危うく、冒険気分になりかけてたけど、見つかったら絶対に怒られるだろうし。




見つかることだけは避けないとね。




『快斗、そこは左じゃなくて右よ』


懐中電灯片手に、左に曲がろうとした快斗君に、快斗君の後で歩く翠が右と促す。


……うん、快斗君が先頭ってこと、私まで心配になってきちゃった。



『よし、着いた‼︎』



そういって立ち止まった快斗君が、目の前の建物を、懐中電灯で照らす。



『やっとかよ……』


私の後ろでそう呟いた煌君に苦笑いを浮かべる。

確かに結構時間かかったけど、辿り着いたんだから、結果オーライだよね⁇





警備員に見つからないよう、煌君の手を借りてプールを囲っている柵を超え、プールサイドに立つ。



目の前のプールを見ると、ちょうどプールの授業で、いつも見ていた筈なのに、全然違うところのような感じがして気持ちが上がる。



『よっしゃ‼︎ 入るぞ煌!』




翠の隣で、快斗君が何の前触れもなくそう叫んだかと思うと、プールから水飛沫が上がった。



『突っ立ってるんじゃねえよ、煌‼︎』


プールから顔を出して、ニヤリと笑った快斗君がプールサイドに立っていた煌を引っ張って、無理やりプールの中に引きづり込む。



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